「はじめに」司会・道広勇司(文字の学校)
本日は、シンポジウム「電子書籍の組版ルールを考える」にご参加くださいまして、ありがとうございました。パネルディスカッションをまじえまして、皆さんと今回のテーマについて考えていきたいと思います。ひとつお断わりします。副題に「新たな組版ルールを求めて」とつけておりますが、今日は組版ルールの話を大きく逸脱することになると思いますので、ご了承ください。(会場笑い)
今回のテーマである「電子書籍」にもいろいろありますが、固定レイアウトと動的レイアウトに大きく分けて、今回は動的レイアウトのもの、いわゆるリフロー型と呼ばれるものだけを扱います。(1:25)
動的レイアウトというのは、文字サイズや行間・書体などが変えられるということですね。その端末の上で動的にその場でレイアウトが行われる、と。
電子書籍というのは何かというと、電子的な書籍、つまり電子的に書籍を真似たもの、模倣したものですよね、たぶん。
では、何を真似したかというと、例えばウェブの場合はページ単位ですが、電子書籍の場合は、カタマリつまりパッケージで流通しています。これが本の真似ですね。しかも表紙まであったりするんですねえ! そして中味が、同じ大きさの長方形つまりページがばーっと並んだものでできている。しかも、なんとその四角形、つまりページに左右の区別があったりして、かなり本の模倣になっているんですね。そのうえ、アニメーションによってそのページがめくれたりする。
ただし、単なる模倣ではなく、魔法があります(2:41)。
なんとなく地球にやさしかったり。
ま、それはおいといて(笑)。
ハイパーリンクで他の箇所に飛べたり、検索ができたり、拡大ができたり、カラーで写真がきれいだったり、音声・動画が付いていたり、読み上げてくれたり、何かインタラクティブだったりするわけですね。(3:07)
ところで組版ってなんだったかっていうと、文字であるとか、画像だとかそういうものを平面上に並べたものですね。で、ここ
にあるように,いろんなルールがある。
代表的なのは禁則とか空きの取り方でしょうか。なんでこんなルールがあるかというと、読みやすさとか見栄えの良さを保つためでしょう。それは電子書籍も同じなんじゃないか。
ただですね、これ
は非常にきつい禁則を適用した例なんですけども、見た目もよくないし、読みやすくもないわけです。これはまあ、組版ルールが適切でなかったのか、と。
あ、みなさん、「シェーッ!」って分かります? こういうのです(実演)。若い方はご両親にお尋ねください。(会場笑い)
(4:07)でまあ、電子書籍の組版を考えるにあたって、
紙の本のルールはどこまで実現できるのかとか、電子書籍ならではのルールはあるのかとか、ルールじゃなくて表現方法として電子書籍ならではのものがあるのか、といったいろいろな視点があるわけですね。
(4:32)そして、印刷物での組版ルールも、このように、
いろいろであって、一つではないわけですね。
さて、今日の議論としては、別にこの場で決めましょうとか、結論を出しましょうとは別に考えてなくて、みんなで考えるための出発点になれればいい、と。電子書籍の特性はなんでしょうか、紙の本のルールってどうだったっけな、電子書籍のルールはどうかな、ルールだけじゃなくて、表現方法も考えてみます、というような感じで進行したいと思います。
(5:13)ではこれからパネリストを順にご紹介して、それぞれ今回のテーマについてお話をしていただきたいと思います。