文字を楽しむ。文字と印刷を遊ぶ。

もじもじ T シャツシリーズ第二弾は契丹文字 T シャツです。この T シャツには，千年近く前に建てられた契丹（遼）国の二種類の文字で「大礼（或いは印）の文字」という「契丹文字」を意味する言葉が書かれています。
契丹文字は未解読文字なので，読み方にはまだ検討の余地がありますが，向かって左の文字は契丹大字，右の文字は契丹小字でいずれも「mo doron usug」と読みます。この T シャツの契丹文字は，実在する契丹碑文の文字を忠実に再現してデザインしたものです。

この T シャツは，2012年4月に開催された第34回もじもじカフェ「解読！ 契丹文字」の開催を記念して企画されました。当時東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に滞在されていた契丹語・契丹文字研究者の呉英喆さん（中国内蒙古大学研究員）に監修をお願いし，書体デザイナーの竹下直幸さんにデザインをして頂いたものです。

監修：呉英喆さん（中国内蒙古大学研究員）
デザイン：竹下直幸さん（書体デザイナー）
企画・制作：もじもじカフェ

10世紀の初め，契丹人は契丹大字と契丹小字という二種類の文字を創造しました。大字は神冊五年（920）に遼太祖耶律阿保幾が製作したと史料に記録されていますが，実は阿保幾の命令で，耶律突呂不と耶律魯不古が製作したと考えられています。小字は阿保幾の弟耶律迭剌が製作し，創製年代は不明ですが，おそらく大字が製作された何年か後のことだと推測されています。いずれも漢字の字形を真似て作った文字で，小字はウイグル文字の表音システムを受けてのものだと考えられています。大字と小字は字形が全く異なります。
大遼国（契丹国、907―1125）が滅亡した後，契丹大字と小字は金代（1115―1234）にも続けて使われ，金文宗明昌二年（1191）に廃止されました。1922年，内モンゴルの慶陵遺跡からは契丹小字，1951年，遼寧省錦西西弧山からは契丹大字が，それぞれ初めて発見されました。現在，中国・日本を始めとした多くの国の学者達が契丹文字の解読に努力しています。

監修者のことば

この契丹大字と契丹小字は「耶律祺墓誌銘」（1108年）と「耶律玦墓誌銘」（1071年）と呼ばれる石刻の拓本からそれぞれ抜き出し，竹下さんに丁寧にリファインしていただきました。この文字を通して，モンゴル大草原の征服者であった契丹人の文字の特徴を読み取っていただければ嬉しいです。

呉英喆（2012/06/17）

デザイナーのことば

2種ある契丹文字を並べて，比較してもらえるような構成にしました。
漢字の造形に近い契丹大字と，より複雑な契丹小字。
同じことばを表しているのに文字数まで違うのが面白いです。
古い拓本は欠けが目立ちましたが，イマジネーションを働かせてリファインしました。

竹下直幸（2012/06/27）