第49回「帝国陸軍の偽札作戦」
開催概要
日時 | 13:00〜16:00(12:40受付開始) |
---|---|
会場 | 登戸研究所資料館(神奈川県川崎市) |
ゲスト | 山田朗さん(歴史研究者) |
参加費 | 700円 |
定員 | 30 名 |
内容
武器を用いて戦うだけが戦争の姿ではありません。古今東西,戦闘の陰にはスパイ活動や暗殺,撹乱工作,あるいは宣伝といった活動もありました。こうした「もう一つの戦争」のありさまは「秘密戦」と呼ばれます*。かつて大日本帝国陸軍には,秘密戦のための資機材の研究・開発・製造を専門的に担う組織がありました。それが第九陸軍技術研究所,通称「登戸研」です。
登戸研は化学兵器・生物兵器や米国本土を攻撃する風船爆弾を開発したり,電波兵器の開発を試みたりしました。研究所の存在自体が秘密でしたが,巨額の資金が投入され,敗色濃厚となっていた 1944 年には 1000 人の大所帯でした。
ここで行われた謀略作戦の一つに偽札の製造があります。中華民国が発行する紙幣「法幣」のニセモノを大量に印刷して流通させ,インフレで経済を混乱させようというのです。この作戦は実際に行われ,現地での物資の調達にも大いに利用されました。
偽札作戦には,当時の製紙・印刷の技術者・工学者たちや民間会社も多く関わっていました。しかし,敗戦時に証拠隠滅が行われたことや,関係者が固く口を閉ざしたことにより,長らくその実態は知られていませんでした。1980 年代になると当事者やジャーナリストによる著書も現れ,徐々にその内容が知られるようになりましたが,未だ謎も多く残っています。
登戸研の偽札作戦は,日本の印刷史上まれに見る特異な出来事であり,「科学技術と戦争」を考えるうえで貴重な材料ともなるでしょう。
今回のもじもじカフェは,現在,明治大学・生田キャンパスとなっている登戸研跡地で行います。明治大学平和教育登戸研究所資料館 を館長の山田朗さん(明治大学文学部教授)に案内していただき,そのあと偽札作戦についてお話しいただきます。
* 秘密戦の活動はスパイ活動,スパイ防止活動,謀略(破壊・撹乱・暗殺),宣伝の四つに分けられます。
ゲスト
プロファイル
山田朗(やまだ あきら)
1956年大阪府生まれ。現在,明治大学文学部教授。平和教育登戸研究所資料館長。専攻は日本近現代史,軍事史,天皇制論,歴史教育論。
主な著書:『兵士たちの戦場』,岩波書店(2015),『昭和天皇の戦争』,岩波書店(2017),『日本の戦争』1・2・3,新日本出版社(2017〜2019)