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第12回「ガリ版文化と日本人」

開催概要

もじもじカフェ第12回「ガリ版文化と日本人」は終了しました。
終了報告 もご覧ください。
日時 15:00〜17:30(開場14:30)
会場東京阿佐ヶ谷
ゲスト志村章子さん(ガリ版研究家)
参加費1000円(ワンドリンクつき)

内容

明治時代,事務作業の効率化のために生み出された謄写(とうしゃ)印刷は,日清・日露戦争で軍に重宝され,官庁・企業・学校へと普及していきます。絶え間ない技術革新と技法の探求が行われるなか,同人誌や労働組合,学生運動,硬軟アングラ印刷といった文化・政治などのさまざまな分野へ浸透する一方で,超絶技巧をこらした数々の美しい多色刷りの芸術作品を生み出しました。

ヤスリの上に置いた原紙を鉄筆(てっぴつ)で引っ掻いて製版するときの音から「ガリ版」とも呼ばれた謄写版。その歴史は日本の近代史そのものと言えるでしょう。

今回は,ガリ版文化史の著書やガリ版ネットワークでの活動で知られるフリージャーナリストの志村章子さんをゲストにお招きし,ガリ版文化と日本人についてお話を伺います。

ゲスト

プロファイル

志村章子さん
(ガリ版研究家)

志村章子(しむら しょうこ)
1939 年東京生まれ。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)第2西洋画科卒。週刊誌(「週刊大衆」),専門誌(『文具と事務機』)で編集者・記者のかたわら新聞・雑誌に寄稿。のちにフリーライター。『ガリ版文化を歩く』(新宿書房),『ガリ版文化史』(同。共編著),『語りつぐ田中正造』(社会評論社。共編著),『伊東屋百年史』(非売品)など。謄写版発明 100 年の 1994 年秋に市民によるガリ版愛好者の会「ガリ版ネットワーク」を始める。活動内容は謄写器材の頒布,史資料の発掘,収集,保存。展示会開催,関連資料館との交流など。

終了報告

ガリ版やロウ原紙を前にお話しをされる志村さん

ガリ版は初めてという参加者の方にガリ切り(製版)を体験していただきました

明治40年代のガリ版(二号サイズ)と、製版に使うヤスリ(手前右)、ロウ原紙(同左)

日本の近代化と歩みを同じくしてきた簡易印刷,謄写版(ガリ版)。今回の「ガリ版文化と日本人」でゲストの志村さんはまず,80年以上の長きにわたって日本人に愛されてきたガリ版の特徴と,その発展史を振り返られました。すでに40年前に機材の生産が中止されているガリ版ですが,現在もなお愛好者のミニコミや,またラオスの小学校などで使われていることが紹介されました。

今回は明治40年代と1970年代に作られた2つのガリ版印刷機や,ヤスリ,原紙など沢山の資料をお持ちくださり,それらを使って実際の製版・印刷方法を説明していただきました。またガリ版に触れるのは初めてという参加者の方に,鉄筆によるガリ切り(製版)を体験していただきました。かつて謄写印刷の会社に勤めておられた参加者の方が,実作業の工程を説明されるなど,ガリ版を体験してこられた方々の思い出話にも花が咲きました。

後半ではまず,ガリ版界のカリスマ,草間京平氏の孫弟子にあたる,佐藤勝英さんによる謄写版浮世絵や,四国の坂東俘虜収容所で制作された所内音楽会のチラシの復刻版など,技術の粋を集めたアートとしての多色刷り謄写版印刷物を紹介。また,参加者の方に事前に募ったガリ版の思い出アンケートからは,謄写ファックスやボールペン原紙など,様々な方向に話が広がりました。「ガリ版を体験したい」「機材や資材はどこで手に入りますか」といった熱心な質問が寄せられ,志村さんによるガリ版ネットワークの活動の今後にも関心が集まりました。かつてガリ版を使っていた方から,初めてガリ版に触れたという若い方まで,熱気に包まれた回になりました。

なお今回は新宿書房の編集者の方にお越しいただき,志村さんのご著書『ガリ版文化史』『ガリ版文化を歩く』の2冊を割引販売していただきました。

参加者の声

「先生の大変な御努力を伺い,集まった方々の熱い思い…と,大変楽しい時間・空間でした。」

「ふらりと土曜の昼さがり,コーヒーを飲みながらこんなおもしろい話が聞けて,おもしろそうな方々が集まるところへ来れる楽しみができました。」

「とても素晴らしいお話が聞けて楽しめました。ガリ版は人との生活に密着している分,より身近にお話を感じることができました。」

「とても面白かったです。書体の話,保存の方法などまだまだ広げられそうなテーマですね。貴重な機会をどうもありがとうございました。」

「色々な人が参加していて,話を聞くだけでも楽しかったです。自分でもいろいろ意見を言えるのも楽しいです。」