第11回「中華書体事情」
開催概要
日時 | 15:00〜17:30(開場14:30) |
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会場 | バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 小畠正彌さん(ダイナコムウェア社 顧問) |
参加費 | 1200円(ワンドリンクつき) |
内容
中国語と日本語はどちらも漢字を使いますが,漢字使用の有り様はだいぶ違っています。字体が違っていたり,同じ漢字が違う意味で使われたりするほかに,書体の使われ方にも違いがあるようです。
また,同じ中国語でも,中国(中華人民共和国)では簡体字,台湾(中華民国)では繁体字,と字体が違っていて,異なる文字文化が展開されています。中国の本土と香港とでもまた様子が違っているようです。
では,中国語の世界では,印刷物や看板にどんな書体がどんな風に使われているのでしょうか。
今回は,台湾に本社を置くフォントベンダー,ダイナコムウェアのコンサルタントである小畠正彌さんをゲストにお招きし,中華世界の書体事情を覗いてみます。周辺の話題として,中国語の組版についても触れます。
ゲスト
プロファイル
小畠正彌(こばたけ まさや)
1942年東京都生まれ。1966年 桑沢デザイン研究所 ビジュアルデザイン科卒。設備機器メーカー,新聞社,ピーアール会社を経てパソコンに遭遇。その後総合印刷会社に転職して黎明期のDTPによる多言語処理・印刷ワークフローの構築に参加。1998年より ダイナコムウェア株式会社 勤務。ウェブ印刷サービス,デジタルドキュメント管理ツール,電子書籍用フォント制作,フォントライセンスの営業を経て,現在,中国文字コード規格 GB18030 の国内普及窓口をサポート。
終了報告
今回の「中華書体事情」では、ゲストの小畠さんは、上海や北京で撮影されたたくさんの文字の写真や、印刷物のサンプルなど豊富な資料をお持になり、それらをプロジェクターで投影しながらお話しを進められました。まず、漢字文化圏で使われている繁体字と簡体字について、それぞれの定義や歴史、また実際の字形の違いを概観。その後、宋体、黒体など代表的な書体を紹介し、どんな書体がどういった場面で使われているかを話されました。次に、中国、台湾、日本の実際の書体デザインの違いを同じ文字で比較し、各地の書体デザインにおける好みの違いを観察しました。日本で使われるフォントを中国で作るにあたっての苦労話や、中国における著作権の問題など、フォント会社の方ならではの興味深いお話しも伺えました。
今回は、小畠さんご自身が撮りためた上海、北京の看板や、中国と台湾の実際の印刷物の文字組の画像を見ながら、参加者の方にも自由に感想や意見を言っていただきました。大勢でわいわいと感想を言うことで、中国と台湾の文字組版の違いなど、さまざまな発見があったようです。
休憩をはさんだ後半では、「中国ではヨコ組だけですが、日本と台湾では、タテ組、ヨコ組があることが、書体のデザインに関係しているのでしょうか?」などさまざまな質問で盛り上がりました。
参加者の声
「とても充実した話を聞けて素晴らしい時間を過ごせました」
「台湾の書体を見ながら、日本にも似た書体はあるな、などと考えていたのですが、山や為などの字のバランスを見ていると、色々と感覚が違うものだなと思いました」
「普段は「こういうものだ」と思って見ている中国の印刷物ですが、日本の印刷に関わる方たちから見ると、座りが悪い、禁則処理の有無はどうなっているのか、という感想が上がったのが新鮮でした。これから注意して見てみます」