第10回「消えた漢字の仲間たち」
開催概要
日時 | 15:00〜17:30(開場14:30) |
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会場 | バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 荒川慎太郎さん(西夏語・西夏文字研究者) |
参加費 | 1200円(ワンドリンクつき) |
内容
中国で生まれた漢字は,東アジアにおいて最も影響力を持った文字といえます。日本の仮名をはじめ,各地でさまざまな文字が漢字に強く影響されて生み出されました。11世紀初頭,中国西北の西夏という国が,漢字を基に考案した「西夏文字」もその一つです。漢字のようで漢字ではない,この不思議な文字は西夏が滅んだのち忘れ去られ,日本の西田龍雄博士たちが解読する20世紀まで,謎の文字となっていました。西夏文字とはどのような文字なのでしょうか。また,漢字を模して作られた「疑似漢字」にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は,気鋭の西夏語・西夏文字研究者,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の荒川慎太郎さんをお迎えし,西夏文字のお話を中心に,契丹文字,女真文字など,東アジア各地で生まれ,歴史の中に消えていった「漢字の仲間たち」のお話を伺います。
西夏文字 | 契丹文字 | 女真文字 |
(「世界の文字」http://www.nacos.com/moji/ より転載) |
ゲスト
プロファイル
荒川慎太郎(あらかわ しんたろう)。
1971年仙台に生まれる。京都大学大学院修了。博士(文学)。高校の頃から興味を持ち始めた西夏文字・西夏語の研究を続け,2003年より東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所に勤める。2007年,漢字と東アジアの文字をテーマにした特別展示会『好奇字展(こうきじてん)』の監修と実行委員長を務め,展示会は好評を博した。
『タングート(西夏)語辞典』(E. I. クチャーノフと共編著・京都大学文学部・立命館白川静記念東洋文字文化賞),『図説 アジア文字入門』(伊藤智ゆき他と共編著・河出書房新社),「謎の西夏語・西夏文字に挑む」『新シルクロードの旅3』(NHK取材班監修・講談社),「西夏の時代」『週刊シルクロード紀行40』(朝日新聞社)など。
終了報告
今回の「消えた漢字の仲間たち」では,ゲストの荒川さんはまず,西夏文字,契丹文字,女真文字をはじめ,壮(チワン)文字・水(スイ)文字など(漢字文化圏の周辺で生まれた)疑似漢字を紹介し,続いてご専門である西夏文字について,チベット・ビルマ語族の言語が持った唯一の表意文字であること,漢字と違って象形性が全くないことなど,西夏文字の特性について解説されました。
後半では,「西夏文字はどういった筆記具で,何に書かれていたのですか」「どういった階層の人に使われていたのでしょうか」「西夏文字の書き順は」など活発な質問が飛び出し,荒川さんはひとつひとつ具体的な例を挙げながら丁寧に答えられました。「なぜ西夏文字はこんなにも画数が多くて複雑な字形なのか」という質問に対しては,漢字より画数がずっと多く感じるのは,画数の極端に少ない文字が無いからで,個々の文字の画数は実はそう多くはないことを述べ,実際に西夏文字の一から十までを紹介しながら,複雑だが誤読されにくく,実用性があったということなどをやさしく解説されました。
今回は,河出書房新社から編集者の方にお越しいただき,『図説 アジア文字入門』を割引販売していただきました。
また今回のイベントに合わせ,荒川さんに監修頂き,デザインを第7回ゲストの竹下直幸さんにお願いして,胸に西夏文字で「西夏文字」と書かれた,もじもじカフェオリジナルの 西夏文字 T シャツ を制作し,好評をいただきました。竹下さんの制作上の苦労話なども披露されました。
※西夏文字 T シャツは ショップもじもじ で販売しています。
参加者の声
「歴史的な流れや具体的な語句例など分かりやすく,素人の私でもおもしろかったです。」
「荒川さんが西夏文字を目の前でさらさらと書かれるのを見て,西夏文字は死んではいないのだ,と思いました。」