第9回「本の顔を作る」
開催概要
日時 | 2007年10月13日(土) 15:00〜17:30(開場14:30) |
会場 | バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 川畑博昭さん(装丁家) |
参加費 | 1200円(ワンドリンクつき) |
内容
書店で,さまざまな顔を読者に向けて並んでいる本。出版社の依頼を受け,本の顔にあたるカバーや表紙などをデザインするのが装丁家です。
今回のゲストの川畑博昭さんは,専業の装丁家として,幅広い分野の書籍装丁を2000冊以上手がけられ,その力強い文字使いで数々のベストセラーを演出してきた方です。長年写植を利用したアナログの版下で装丁原稿を作ってこられましたが,現在はパソコンで仕事をされています。装丁家として文字とどのように向かい合ってきたのか,その具体的な仕事術を中心に伺います。
ゲスト
プロファイル
川畑博昭(かわばた ひろあき)
1942年,東京都生まれ。出版社のデザイン部に所属しデザインを学ぶ。ここでタイポグラフィーと書籍のデザインに興味を持つ。家業の鉄工所経営に携わった後,デザインに復帰。1975年川畑デザイン事務所設立。ビジネス,政治経済を始めとして幅広い分野の装丁を手掛ける。日本図書設計家協会 理事。作品に,『超勉強法』(講談社),『EQ こころの知能指数』(講談社),『数学嫌いな人のための数学』(東洋経済新報社),『サラリーマン金太郎』(集英社),『イチロー革命』(早川書房),その他『日経文庫』,ダイヤモンド社のドラッカーのシリーズなどがある。
終了報告
第 8 回は手動写植の熟練オペレーターの方のお話でしたが,今回は写植を長年使ってこられたデザイナーの方のお話を伺いました。今回のゲスト,装丁家の川畑博昭さんは,まず,装丁ができるまでの手順を,印刷版下を作るという旧来の工程を軸に,編集者との打ち合わせから本が書店に並ぶまでを具体的に説明してくださいました。資料として持って来ていただいた版下原稿や今までの作品に,参加者の皆さんは興味深そうに見入っていました。また,ベタ(字間調整無し)で打ったままの写植と,字間を詰めたもの,左右の見た目のずれを修正したものを資料として,文字との緻密な向き合い方の一端を披露してくださいました。
後半では,「お仕事をデジタルでなさるようになって,一番変わったことはなんですか」「影響を受けたデザイナーは」など,活発な質問や意見が出され,川畑さんはひとつひとつ丁寧に答えられていました。今回は川畑さんと同業の装丁家の方も多く参加され,デジタル時代の若いデザイナーに感じることなど,さまざまな方面に話題が広がりました。また,本がいくらベストセラーになっても装丁家には印税が入らないなどの意外な問題点も紹介され,現代の出版,装丁界の事情が垣間見える回となりました。
参加者の声
「川畑さんの,文字,本への愛情をとても感じました」
「川畑さんの作品をあらためて見せていただき,文字も含めてやはり「品格」があるなァと感じました。結局作品は作者が出てしまうもの,川畑さんのお人柄がまた志が装丁に表れているのですね」
「仕事を依頼する側としては耳の痛い話もあって,今後の仕事に役立ちそうです」