第8回「写真植字の時代」
開催概要
今回はカフェイベントと見学会をセットにし,二日間に分けて開催します。
見学会は時間差を設けて 3 グループに分かれて行います。
日時 | 見学会:2007年8月4日(土) (1) 13:00〜,(2) 14:00〜,(3) 15:00〜 カフェ:2007年8月5日(日) 15:00〜17:30(開場14:30) |
会場 | 見学会:プロスタディオ(東京・九段下) カフェ:バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 駒井靖夫さん(写植オペレーター) |
参加費 | 1200円(ワンドリンクつき) |
内容
写真植字(しゃしんしょくじ;略して写植)は,活版に取って代わる画期的な新技術として発明され,昭和40年代頃に普及しました。
活版では,一本一本の金属活字を並べる「植字(しょくじ)」という工程がありますが,写真植字では,文字盤上の文字を拾いながら,写真と同じ原理で文字を印画紙の上に焼きつけていきます。活版よりも小さな設備でできること,文字の自由度が高く,多様な書体が制作されたことなどから,オフセット印刷の発達にあわせて,一時代を築いたのでした。
今回のゲストは,手動写植機オペレーター,駒井靖夫さんです。駒井さんは45年の長きにわたり,杉浦康平氏,鈴木一誌氏ら著名デザイナーの篤い信頼のもと,手動写植の第一線で,美しい文字組を追求してこられました。
今回は駒井さんのご好意により,見学会と組み合わせての開催が実現しました。手動写植機とその操作を見せていただきます。
ゲスト
プロファイル
駒井靖夫(こまい やすお)。
1941 年,北海道生まれ。1961 年より写真植字業の道に踏み込む。1972 年,(株)プロスタディオとして渋谷区恵比寿にて独立。主な取引先としてヤシカカメラ,角川書店など。1981 年,事務所を飯田橋に移転。この頃より杉浦康平氏を中心に鈴木一誌氏,故 谷村彰彦氏,戸田ツトム氏,熊谷博人氏などの仕事を手がける。現在は,角川書店などを中心に営業を行っている。
終了報告
今回のもじもじカフェは,ゲストの駒井さんのご好意で,駒井さんの仕事場であるプロスタディオの見学会とあわせ,2 日間にわたって開催しました。
見学会では,まず駒井さんが写研最後の手動写植機,PAVO-KY を実際に操作しながら,手動写植機の仕組みや,「一寸ノ巾」方式という文字盤の文字配列,字間調整の方法などを説明され,その後,何人かの方が実際に,ご自分の名前などを写植で打つ体験をしました。
翌日のカフェでは,司会の道広よりインタビュー形式でお話を伺い,写植の世界に入られたきっかけや当時の写植機のお話,独立された頃の写植を取り巻く環境,また著名なデザイナーらと仕事をすることになった経緯などをお話し頂きました。「美しい文字組をするにはどうしたらいいのか」という質問に対しては,写植のサンプルと,具体的にどういう調整をして打ったのかを詳しく示した図を見せてくださり,駒井さんの緻密なお仕事の一端を伺い知ることができました。「写研の研修制度はどのようなものだったのですか」「好きな書体は何ですか」など,会場からも活発に質問が出されました。
また今回は,駒井さんが見学会に参加された方のお名前をお一人ずつ写植で打ってプレゼントしてくださったほか,初期の手動写植機の写真や,写植機と物価の比較表など,豊富な資料をご用意頂きました。
参加者の声
「コンピュータ組版でも,最近はこだわった文字組ができるようになりましたが,詰めの仕方など,手動写植で培われた技術が基本になっています。原点に立ち返ることができたお話でした」
「今,ここまで気を使って組版をするデザイナーがどれくらいいるだろう,と思いました。DTP の功罪の「罪」の部分でいうと,分業制が成り立たなくなり,スピード,コストと引き換えに失ったものもいろいろあるのかな……と思いました」