第2回「日本生まれの漢字たち」
開催概要
日時 | 2006年8月6日(日) 15:00~17:30(開場14:30) |
会場 | バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 笹原宏之さん(日本語学者) |
参加費 | 1000円(ワンドリンクつき) |
内容
日本で作られた漢字は,「畑」や「峠」のような広く普及しているものだけではありません。特定の地域・職業でのみ用いられるもの,作家が自分の作品で使ったもの,親が子の名に使ったものなど,実に多様です。国字の中には海外に輸出されたものまであります。
日本人はどのようなときにどのような漢字を生み出してきたのでしょうか。新しく漢字が生み出される背景には何があったのでしょうか。
日本で使われてきた漢字を,誤字まで含めて徹底的に調査してこられた日本語学者,笹原宏之さんにお話しを伺います。
ゲスト
今回のゲストは岩波新書『日本の漢字』の著者,笹原宏之さんです。
プロファイル
笹原宏之(ささはら ひろゆき)
1965年,東京都生まれ。早稲田大学大学院 文学研究科 博士後期課程 単位取得。『国字の位相と展開』(三省堂)により,博士(文学)(早稲田大学)。文化女子大学 専任講師,国立国語研究所 主任研究官を経て,現在,早稲田大学 社会科学部 助教授。専門は日本語学,文字・表記の歴史と現状について探究する。法制審議会では人名用漢字の追加,JCS調査研究委員会ではJIS漢字第1・第2水準の改正や第3・第4水準の策定などに携わる。著書に『日本の漢字』(岩波新書),『現代日本の異体字』(三省堂)など,論文に「携帯メールにおける文字表記の特徴とその影響」(『社会言語科学』)などがある。
終了報告
今回のもじもじカフェでは、笹原さんは、よく言われている国字の「常識」を、豊富な実例を挙げながら一つ一つ覆していく形でお話を進められました。国字の出現は平安時代からと言われてきたが、実は奈良時代の風土記や木簡の中に既に見られること。また国字は、中国の漢字に和語に相当する概念がない場合に造り出されたという説には、中国で既に「かし」を表す「橿」という字があるにも関わらず「樫」という国字が作られた例などを紹介し、日本人が、より自分たちの感覚に合う文字を生み出し、その中から表現性の豊かなものが残っていった道筋を、鮮やかに解き明かされました。
休憩をはさんだ後半は、質疑応答から始まりました。「国字は今でも作られているのか」「日本語学者としてのお子さんの名付け方法は」など活発な質問が出され、笹原さんが丁寧に答えられました。また、今回は初の試みとして、参加者の方に、「私が見つけた変な漢字」と「創作漢字」という二つの課題の事前提出をお願いし、笹原さんに講評して頂きました。寄せられた力作の数々に、改めて日本人の「漢字」に対する思いが感じられました。
笹原宏之さんのご著書『日本の漢字』(岩波書店)と『現代日本の異体字』(三省堂)の担当編集者の方も参加されました。本の編集にまつわるお話しをしていただき,割引販売していただきました。