第1回「書体を作るという仕事」
開催概要
日時 | 2006年6月3日(土) 15:00~17:30(開場14:30) |
会場 | バルト(東京・阿佐ヶ谷) |
ゲスト | 鳥海修さん(書体デザイナー) |
内容
世の中の印刷物には,明朝体・ゴシック体をはじめ,いろいろな書体が使われています。真面目な文字,ちょっとすました文字,可愛い文字,暖かい文字……。同じように見える明朝体でも,よく見るとみんなちょっとずつ違っています。実はこの書体,人間が一字一字丹念にデザインしているものなんです。漢字・仮名など合せて何千もの文字からなる日本語の書体を作るって一体どんな仕事?
「印刷物の書体なんて気にかけたこともなかった」という方から,「将来,書体デザイナーになりたい」という方まで(?),幅広い方々のお越しをお待ちしています。
ゲスト:鳥海修さん
今回のゲストは書体デザインの第一線で活躍されている鳥海修さんです。
プロファイル
鳥海 修(とりのうみ おさむ)。1955年生まれ。山形県出身。多摩美術大学卒業。有限会社字游工房(じゆうこうぼう)代表取締役であり書体設計士。大日本スクリーン製造株式会社 のヒラギノシリーズ,こぶりなゴシック,字游工房の游書体ライブラリーなど,ベーシック書体を中心に現在まで40書体以上の書体開発に携わる。第一回佐藤敬之輔顕彰。ヒラギノシリーズで2005年グッドデザイン賞受賞。
終了報告
前半は鳥海さんのトークと実演。書体制作の工程の一部を見せていただきました。休憩を挟んだ後半では参加者の質問・感想に鳥海さんが答えていく形を取りました。
「書体デザインを志したきっかけは」「書体制作のプロになるには何年くらいかかるのか」「最も影響を受けた書体デザイナーは」「書体の命名方法は」「これは作りにくかった,という文字はありますか」「これから先,どんな書体を作っていきたいですか」「フォントのイージーオーダーはできるようにならないのか」といった質問が出され,鳥海さんが気さくかつ丁寧に答えられました。
字游工房で開発した各書体の開発秘話など,興味深い話の連続に,参加者は身を乗り出していました。やりとりのなかで,鳥海さんの人柄や書体作りにかける情熱に参加者は感銘を受けたようです。
終了後の懇親会には17名の方が参加し,バルトの美味しいお料理とベルギービールで乾杯。お酒も入ってなごやかな空気の中,時間中には聞けなかった質問も飛び出して,再び盛り上がりを見せました。
参加者の声
「予想を遥かに越えて興味深く楽しい講座でしたし鳥海さんの『ものづくり職人』的な真摯さには胸を撃たれましたし襟を正される思いがしました」
「書体はお米や水のようなものだという話があったけれど,お米とおなじように,『生産者の声』を聞くことができると,ユーザー(消費者)として書体に愛着が湧く」
「鳥海さんの気さくな語り口も魅力的でしたし,進行役のかたが要所ごとに補足事項を述べてくださったので『いまの何?』と思うことなく,安心してお話を聞くことができました。質問用紙の中から話題をひろってもらえるというのも,人前で発言するのが苦手な人間にはありがたいシステムでした」