アラビア文字は,西暦5〜6世紀にナバテア文字を基にしてアラビア語を表記するために生まれたとされる文字です。7世紀にムハンマドが一神教“イスラーム”を創始すると,聖典クルアーン(コーランのこと)を表記するために用いられ,正書法が整備されていきました。
イスラームは誕生後しばらくして,急速にその領域を拡大していきます。こうしてイスラーム化した地域ではイラン系言語,トルコ系言語,インド系言語などの多種多様な言語が話されていました。これらの言語には,文字を持っていたものも持っていなかったものもありましたが,イスラーム化とともに相次いでアラビア文字が採用されていきました。今日,ラテン文字は世界中の極めて多様な言語で採用されていますが,アラビア文字もまた広範囲で使われているのです。
しかし,もともとアラビア語とは発音体系も文法も異なる言語に元のアラビア文字をそのまま使うのは無理があります。そこで,それぞれの言語に適した形に文字体系が改変されていきました。このようにして,ペルシア語を表記するペルシア文字,ウルドゥー語を表記するウルドゥー文字,パシュトー語を表記するパシュトー文字…と多様な文字が生まれました。
これらの文字を総称して「アラビア系文字」と呼びます。
アラビア系文字に関する文献はいろいろありますが,内容にかなりの異同があるので,複数の文献を参照されることをおすすめします。アラビア語以外でのアラビア系文字については文献がぐっと少なくなります。
古今東西の諸文字について言語学の立場からまとめた辞典。
アラビア系文字については「アラビア文字」,「ウルドゥー文字」,「ジャウィ文字」,「シンディー文字」,「スラヴ語の文字」,「東南アジア島嶼部の文字」,「トルコ語の文字」,「ナバテア文字」,「西アジアの文字」,「パシュトー文字」,「東アジアの諸文字」,「フィリピンの文字」,「ペルシア文字」の項参照。
世界の主要な文字の構造と起源・発展を解説。わりとよくまとまっている。
題名にタイポグラフィーとあるが,内容の大部分が文字そのものと書体についてであり,組版に関する記述は少ない。アラビア系文字印刷の歴史に一章を割いているほか,書体や書体デザイナーについて具体的に列挙して記述されているのが有難い。
GICAS「『小児錦』文字資料コーパス構築へ向けた資料収集とデジタル化」プロジェクト主催のワークショップの報告。次の文献も同じ。
第14,15回多言語組版研究会(2005.1.24, 31)の配布資料を改訂したもの。本ページの筆者による。
第10回多言語組版研究会(2004.3.1)の配布資料。文字と記号の合成や書字方向制御といった点について参考になる。2005年1月3日改訂。
2004年11月24日〜12月22日に東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所で行われた展覧会のサイト。
アラビア文字の入門書としてイチオシ。「アラビア語を本格的に学ぶ気力はないが文字には触れたい」という方や,アラビア書道に興味をもった方に。ナスヒー体とルクア体の書き方,読み方が分かる。
トルコでまとめられたアラビア書道作品の豪華本。書道史の解説もある。訳者は日本のアラビア書道の第一人者。
原著はArabic Script: Styles, Variants, and Calligraphic Adaptations, Gabriel Mandel Khan, Abbeville Press (2001)。
現代ペルシア語を仮名でどう表記するかというテーマで書かれたものだが,結果的に現代ペルシア語の発音についての極めて詳細な分析報告となっている。旧説を覆す記述も多く,必読。
ペルシア語に関するウェブのリンク集や学習書の網羅的リストがある。
新ウイグル文字について「現代ウイグル語とコンピュータ」など必読の記事がある。
題名は「日本語」と付いているが,内容はほとんど「音声学入門」である。アラビア語の咽頭化音も含め,音声が網羅的に解説されている。音韻論(音素論)についての簡単な解説もある。